それでも英国のEU離脱は起こらないかもしれない
先日の英国の国民投票ではEU離脱派が勝利した。この結果を受け、デイビッド・キャメロン首相が辞意を表明し、現在はその後継について活発に報道がされている。
手続き上、英国がEUを直ちに離脱しないことは広く認識されていると思うけど、実はEUから離脱しないなんていうシナリオもあるとNew Yorkerの記事は書いている。
それでも英国のEU離脱は起こらないかもしれない。それは今回の国民投票の位置づけ(と議会主権)が関連している。
今回の国民投票結果(そもそもキャメロンが政争の具として始めた)は純粋にはアドバイザリーなものであり、法的拘束力は無い(確かに英国は慣習法の国だけども)。これは言ってみれば大掛かりな国民意見調査のようなものだ。したがって、Pro EU派の議員たちが議会でリスボン条約50条の発動(EUはすみやかな発動をもとめていたが、キャメロンが次のリーダーにその仕事を託した)を否決すれば、Brexitは起こらない。
このシナリオはどの程度現実味があるのか?キャメロンは国民投票でLeaveが多数派という結果を受けて、「結果は望まなかったものだが、尊重すべきである」と答えているし、政治家たちが国民投票の結果を無視することは現実的な選択肢ではないかもしれない。
そこで、より現実味のあるシナリオは総選挙 and/or 二回目の国民投票だという。ニック・クレッグー前Lib Dem党首ーは、2020年に予定されている総選挙の前倒し実施を主張しており、キャメロンはこれを否定していないという。
現実にLeaverたちはBrexitの影響について考えを改めだしている。これはIndependentなどはBregretと呼んでいる。
具体的にはまず、ボリス・ジョンソンなど離脱派の主張する、わがままでいいとこ取りの、EUとの交渉条件は、まったくのPipe dream(夢想)だとより明らかになってきている。その主張はEU高官から起こりえないと反論され、一部はすでに公式にEUとして拒否されている。*1
次に、経済的な影響である。英国債の格下げをはじめ、ポンドは対USDで30年来の低値を記録したし、企業も英国から大陸への移転や英国でのビジネス縮小を模索している。金融の中心地としてのロンドンの地位はフランクフルトかパリに移るかもしれない。
このような状況では、総選挙の結果によっては国民投票結果を見直すことがあってもおかしくはないだろう。
英国伝統のプラグマティズムを発揮すれば、これらは起こってもおかしくないとも感じる。
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参考
*1:例えば移動の自由とEUシングルマーケットへのアクセスはセットであるとか、EU各国とインフォーマルに交渉はできないことがEUとして、公式に決定されている。